こんにちは
助産師のりんごです
母乳不足に悩むママが増えています。今回はおっぱいを母乳工場に例えて、母乳が出てない、又は出にくいと感じる時に考えられる理由を5つあげてみましたので、参考にしてくださったら嬉しいです。
1、母乳工場に発注ができていない
母乳は受注生産です。注文を受けてから製造するシステムになっています。よく「母乳が出たらあげたいけど、出ないからあげられない」という悲しみの言葉を聞きますが、それは逆。あげるから母乳が出るようになるのです。例えば、Amazonは注文するから商品が届きますね。注文もせずに商品が届くのを待つ人はいないと思います。その注文にあたるのが、授乳という赤ちゃんに乳首を吸ってもらう行為なのです。これが赤ちゃんからの発注。授乳をすることでおっぱいを出すためのホルモンが分泌されますよ。
出産直後は授乳してもほとんど母乳が出ないのが普通です。授乳前後で体重を測って母乳量をみると、2gとか0gということも少なくありません。生後2〜3日くらいまではそれでいいのです。正期産で健康な赤ちゃんなら待つことができます。それだけの余力を持って生まれてきています。(早産児や黄疸、出生時のストレスが大きかった赤ちゃんについては病院のスタッフと相談しながら授乳をすすめてましょう)
覚えておいて欲しいのは、産後すぐに授乳をする目的は母乳を与えることよりも、赤ちゃんからの発注を受けるということ。そうすると退院する頃には商品が届き始めます。この時期に発注ができていないと商品はいつまで経っても届きません。また、発注が十分でなければ、十分な量の商品が届きません。
たとえ、母乳量が1gでも2gでも授乳の意味はちゃんとあります。ママのホルモン分泌を促したり、ママの皮膚の常在菌を赤ちゃんに移植したり、胎便の排出を促したり、量をあげられなくても1回1回の授乳がとても大切なんです。
最初は特に重要なので、出産直後から、上手に身体を休めながら授乳はできれば1日8回以上、積極的におこないましょう。退院後に母乳不足感があるなら、授乳を増やしてみましょう。
2、発注や出荷がうまくいかない
頻回に授乳を頑張っているのに、空回りしていることがあります。要するに授乳が正しく行われていないということです。Amazonでいうと、商品をカートに入れて注文出来たと思ってたけど、肝心の発注手続きができていないといった感じ。目的を果たせていないのです。これは専門家にしっかりとチェックしてもらうのが何より大事です。授乳方法は、ママの乳房や乳首の形態、赤ちゃんの月齢、大きさ、哺乳力、お口の状況、向き癖など、様々な個性がありますので、全員が同じようなアドバイスにはなりません。だから、個別でみてもらうのがベストです。
うちの母乳外来でも一回の授乳指導でミルクの補足が要らなくなる症例が数多くあります。この場合、母乳が出ないのではなく、授乳が上手く出来ていなかっただけなのです。正しい授乳方法を実践できれば赤ちゃんがしっかりと母乳を飲みとることができるので、それに合わせてまた母乳分泌量も増えて来るという良いサイクルがうまれます。授乳がスムーズに出来るようになると、ママ心身の負担も軽くなるので頻回授乳が苦ではなくなります。良いサイクルになるよう、はやめはやめに対処するのがポイントです。
3、母乳製造必要量の認識に誤りがある
母乳工場はどのようにして毎日の製造量を決めてると思いますか?それは普段出荷している量です。工場から出荷された量が赤ちゃんの必要量だと認識して、それより多すぎたり少なすぎたりしないように製造量を完璧にコントロールしています。例えば、ミルクを足している場合、そのことを母乳工場は知りません。母乳が不足しているという認識は全くないのです。だからその認識を変えてあげないといけません。母乳量を増やしたいときは、母乳工場にさらなる発注をかけます。授乳回数を増やして母乳分泌量をアップさせながら少しずつミルクを減らしていきます。ここは無理があったら赤ちゃんやママに負担がかかるので、赤ちゃんとママの状態をチェックしながら慎重におこなっていく必要があります。
4、そもそも原材料がなく作れない
発注もあり、出荷にまつわる一連の流れも完璧。母乳工場は、やる気満々になっています。でも、またまた困ったことが起こりました。母乳を作るための材料が工場に届きません。母乳の材料となる水分や栄養をママがしっかりと摂れていないと、どう頑張っても母乳を作ることはできないのです。
うちの母乳外来ではママの普段のお食事内容を記載してもらい栄養状態の分析をしているんですが、これでは母乳が出なくても仕方がないなぁというお食事内容の方が少なくありません。お腹を満たすのと栄養を満たすのは意味が違います。栄養は、母乳の原材料です。そして母乳工場を動かすホルモンの原材料でもあります。そもそも母乳工場自体だって、ママの食べた栄養でできています。
栄養が不足したり栄養のバランスの偏りが母乳の産生にどれだけ影響するのか想像に難しくないと思います。なにも食事に手間暇かける必要はありません。育児に追われて自分の食事どころじゃない!っていうのが現実なのもわかります。でも大丈夫。知識がつけば、工夫次第で簡単に必要な栄養をとることは可能です。バランスが良い食事については、他の記事を参照してください。りんご助産院では目からウロコの栄養学講座もおこなっています。あと、この本もオススメです。本の題名は「妊娠体質に変わる食事」ですが、妊娠中でも授乳中でも、これからの食育でも、大事なことは同じなので、参考になるでしょう。水分は1日2ℓを目指しましょう。
5、ストレスーーーー!!!
ストレスは、本当に厄介です。コツコツ積み上げた努力もドミノ倒しのように崩れていくことがあります。精神的なストレスもありますし、睡眠不足だってストレスです。その他にもストレスの原因は山ほどあります。
まず、ストレスを感じると血管がギュッと細くなって血流が悪くなります。また、ストレスという危機から身体を守るために大量のストレス緩和のためのホルモンを分泌します。体にとってはこっちを作るのが優先なので、母乳に関連したホルモンの材料が減ってしまいます。
ストレスあかーーーん!ママから笑顔が消えていたら要注意。そんなときはとにかく眠りましょう。ネット検索もSNSも家事も一旦は後回に。出来ればストレスの原因になっていることを信頼できる人に話しましょう。そして人やサービスに甘えましょう。これが出来ない優しいママが多いのよ〜。大丈夫。勇気を出して甘えてみて。誰かに頼っても母親失格なんかじゃないよ。感謝して受け取とろう。自分のためだけじゃなく赤ちゃんのためにも。ちゃんと「受け取れる人」は「与えられる人」になっていくんだよ。その循環を止めないようにまわしていこう。
おわりに
「おっぱいが足りない」「おっぱいが出ない」というのは、体質とかではなく、何かの「結果」なのです。私たちが哺乳類である以上、そんな体質の人が多かったら大問題ですよね。
産後すぐから授乳ができなかった、授乳回数が少なかった、適切な授乳方法ができていなかった、水分や栄養が足りていなかった、心身のストレスを抱えすぎている、などなど。複数の原因が重なっていることも多いです。
原因の除去には優先順位もあります。例えば、授乳が痛いとか、赤ちゃんに拒否されるのに、授乳回数を増やそうとしても、ストレスが倍増してしまいます。だから、この場合は授乳がスムーズに楽にできることから目指していかなくてはなりません。
できれば、入院中にしっかりと正しい授乳方法を教えてもらい、こまめに授乳をおこないましょう。母乳のためには母子同室がオススメです。
お見舞いの方は出来るだけ入院中は控えるか、短時間でお願いします。入院中のママにとって休息と授乳はとても大事なのでその時間を確保するのに協力してあげてください。
退院後に少しでも不安があったり、母乳不足を感じるなら、母乳外来を訪ねてみてください。母乳外来では「もっと早く相談に来てればよかった〜!」ってたくさんの方が言われるので、悩んでいる時間は勿体無いのかなと思います。
本来、母乳をあげることは、楽で、幸せで、健康的なことです。なのに、その母乳で苦しんだり、心身が不健康になるのは残念です。「母乳のおかげで、子育てが楽だったわー♡」「幸せだったわー♡」と言える母乳育児になりますように。
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