母が27歳の時、あなたは母のお腹の中にそっとやって来ました。お姉ちゃんがまだ1歳になったばかり。母は仕事に復帰し、忙しい毎日を送っていました。だから小さいあなたの存在になかなか気付かなかった。ある日、あなたの存在に気がついた時、母はちょっと戸惑いました。こんなにいっぱいいっぱいの生活をしているのに、あなたを迎えて大丈夫なのかと。でもね、お腹に手を当てたとき、そこから湧き上がるなんとも言えない幸せな気持ちを強く感じました。だから、どんなことがあってもあなたに会いたいと思いました。そして、ふたりの母になる決心をしました。
あなたは2001年2月5日に誕生しました。元気な男の子。親バカだけど天使のように可愛かった。スヤスヤとよく眠る子で、母とお姉ちゃんの会話を聞きながら、いつも気がついたらひとりで眠っていました。あなたは、おっぱいが大好きな、おっぱい星人。母はあなたが2歳になったばかりの頃、看護学校に通い始めましたが、あなたは保育所から帰るとまずはおっぱいを飲んでました。膝の上、片方はあなたが座っておっぱいを飲む、もう片方はお姉ちゃんが座って、保育所であったことをたくさん話してくれました。母が夜中に勉強をするときも時々起きてきて、おっぱいを飲みながら勉強に付き合ってくれました。忙しかったけど、そんな時間がとても幸せでした。そんなおっぱい星人は3歳の誕生日を迎えたときに「おっぱいバイバイする」って言って、自分でやめることを決めました。ちょっと寂しい反面、成長が嬉しくもありました。
あなたは、つねに自分の世界がありました。保育所ではお遊戯に寄らないことが多かったので、先生を困らせました。2月生まれだったせいか、すべてが同級生よりちょっと遅め。言葉が出るのもとてもゆっくりでした。「一成くん◯◯が出来ないのでお家でも練習してください」と、よく先生に言われました。「いつかできるんだから」っていう父の力強い言葉に勇気をもらって、見守る毎日でした。
ある日、迎えに行くと同級生はみんなドッジボールをしているのに、あなたはいません。探すと、あなたは園庭の隅っこで寝転がっていました。「何しとん?」ってきくと「お空、見てるの」って言いました。「なんで?」ってきくと「恐竜がいるから」と。一緒に空をみるとホントに恐竜のような雲が浮かんでいました。「ホンマやな!」っていうと、あなたは嬉しそうに微笑んでいました。母は空が好きですが、もっともっと大好きになりました。
あなたが小学校に入学するとき、母も助産師の学校に入学することになりました。入学式の日がかぶってしまい、すごく悩みましたが、あなたの入学式に行きたい気持ちが勝ちました。助産師学校では「入学式を欠席するなんて前代未聞です」と注意を受けましたが、始末書を提出することでなんとか入学できました(笑)
助産師の学校は充実はしてたけど、かなりしんどかったのも確か。限界を感じて何度も泣いてしまいました。そんな私を見ていたからか、あなたもちょっと不安定になりました。朝玄関であなたは泣きながら訴えました。「学校に行きたくない!ママが学校に行くんやったら、一成は学校に行かずに、サティにいくから!」でも、私は大切な実習があってどうしても行かなければならなかった。「ママ大事なお勉強やから、行くな。サティに行かんと学校に行くんやで。」そう言って泣いてるあなたに背中を向けて出て行きました。母親失格やわ。そんな思いがこみ上げて実習先の病院についても涙が止まりませんでした。一成、あのときはお話をゆっくり聴いてあげられなくて本当にゴメンね。小学校の担任の先生に電話したら、ちゃんと登校してるという事でした。朝のやり取りを先生に説明したら、「大丈夫。私に任せて。お母さんはしっかり勉強してください。」と先生は言ってくださいました。入学式以外は殆どの行事に行けなかったけど、先生はいつも「お母さん、一成は大丈夫。みんなでちゃんとみてるから、心配せんと勉強頑張って!憧れの助産師になってください。」そう言って毎日連絡帳にビッシリとあなたの様子を書いて母に教えてくれました。父と母だけじゃなく、おじいちゃん、おばあちゃん、ママ友、マンションの管理人さんまで、みんなが一緒にあなたやお姉ちゃんを育ててくれました。
あなたはとっても恥ずかしがり屋さんで、ひとりでいるのが好きでした。でも、小学生の高学年になったとき少年サッカーチームに入りました。見学に行ったときには恥ずかしくて溝の中に隠れてしまったあなたでしたが、入団後は友達がたくさんできて、チームワークを学んでいきました。それまで家で過ごす事が多かったあなたが、ランドセルを置いた瞬間にピューンと遊びに出ていくようになりました。毎日暗くなるまで友達と遊ぶあなたはとても楽しそうでした。
手紙の2枚目、息子へ(2)に続く
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