りんごの思想

選んできてくれたんだね!

私がプレパパママ教室などで
必ず最後に読む詩があります
ある産婦人科医のかいた詩です

無事に生まれてくるのか?
本当に育てていけるのか?
楽しみなんだけど
幸せなんだけど
ときどき不安で
押しつぶされそうになる
この責任やしんどさから
逃げてしまいたくなる

そんな時
すっと心に沁みる詩です

—私があなたを選びました— 

おとうさん、おかあさん
あなたたちのことを
こう、呼ばせてください。

あなたたちが仲睦まじく
結び合っている姿を見て
わたしは
地上におりる決心をしました

きっとわたしの人生を
豊かなものにしてくれると
感じたからです

汚れない世界から
地上におりるのは
勇気がいります

地上での生活に不安をおぼえ
途中で引き返した友もいます

夫婦の契りに不安をおぼえ
引き返した友もいます

拒絶され
泣く泣く帰ってきた友もいます

あなたの
あたたかいふところに抱かれ
今、わたしは
幸せを感じています

おとうさん
わたしを受け入れた日のことを
あなたはもう
思い出せないでしょうか?

いたわり合い、求め合い
結び合った日のことを

永遠に続くと思われるほど
の愛の強さで
わたしをいざなった日のことを

新しい”いのち”のいぶきを
あなたが
フッと予感した日のことを

そうです、あの日
わたしがあなたを選びました

おかあさん
わたしを知った日のことを
おぼえていますか?

あなたは戸惑いました
あなたは不安に襲われました
そしてあなたは
わたしを受け入れてくださいました

あなたの一瞬の心のうつろいを
わたしはよーくおぼえています

つわりのつらさの中で
わたしに思いをむけて
自らを励ましたことを

わたしをうとましく思い
もういらないとつぶやいたことを

私の重さに耐えかねて
自分を情けないと責めたことを

わたしはよーくおぼえています

おかあさん
あなたとわたしはひとつです

あなたが笑い喜ぶときに
私は幸せに満たされます

あなたが怒り悲しむときに
私は不安に襲われます

あなたが憩いくつろぐときに
私は眠りに誘われます

あなたの思いはわたしの思い
あなたとわたしは、ひとつです

おかあさん
わたしのためのあなたの努力を
わたしは決して忘れません

お酒をやめ、タバコを避け
好きなコーヒーも減らしましたね

たくさん食べたい誘惑と
本当によく闘いましたね

わたしのために散歩をし
地上のすばらしさを
教えてくれましたね

すべての努力はわたしのため
あなたを誇りに思います

おかあさん
あなたの期待の大きさに
ちょっぴり不安を感じます

初めての日に
わたしはどのように
迎えられるのでしょうか?

わたしの顔は
あなたを
がっかりさせるでしょうか?

わたしの身体は
あなたに
軽蔑されるでしょうか?

わたしの性格に
あなたは
ため息をつくでしょうか?

わたしのすべては
神様とあなたたちからのプレゼント

わたしは
こころよく受け入れました

きっとこんなわたしが
いちばん愛されると信じたから

おかあさん
あなたにまみえる日は
まもなくです
その日を思うと
わたしは喜びに満たされます

わたしといっしょに
お産をしましょう

わたしがあなたを励まします
あなたの意思で回ります
あなたのイメージでおりてきます

わたしはあなたを
こよなく愛し信頼しています

おとうさん
あなたに抱かれる日は
まもなくです

その日を思うと
わたしの胸は高鳴ります
わたしたちといっしょに
お産をしましょう

あなたのやさしい声が
わたしたちに
安らぎを与えてくれます

あなたの力強い声が
わたしたちに
力を与えてくれます

あなたのあたたかいまなざしが
わたしたちに
励ましを与えてくれます

わたしたちはあなたを
こよなく愛し、信頼しています

おとうさん、おかあさん
あなたたちのことを
こう、呼ばせてください

あなたたちが
仲睦まじく結び合ってる姿を見て
わたしは
地上におりる決心をしました

きっと、わたしの人生を
豊かなものにしてくれると
感じたからです

おとうさん、おかあさん
今、わたしは思っています
わたしの選びは正しかった、と

わたしが
あなたたちを選びました

作者 鮫島 浩二