りんごの思想

お母さんの娘であることを嬉しく思う!ICUより愛を込めて

今、病院のICU(集中治療室)でこれを書いている。「プ、プ、プ」というモニターの規則的なリズムに「スコーン、スコーン」という人口呼吸器の音。母が眠るベッドのまわりにはたくさんの機械が置いてあり、それらすべてが母に繋がっている。

先週、ずっと高熱が続いていた母。もともとあまり体力があまりないため、心配だった。通院がしんどい状態だったので訪問看護を利用し自宅で点滴治療を始めたものの、なかなか容態は良くならなかった。

急変

23日の夜、父から電話があり「お母さんがあまりにしんどそうだから病院に入院させたほうがいいかも」と電話があった。実家に向かうと、母の意識は朦朧としており、熱も40度を超えていた。すぐに病院へ運んだ。病院に着いてしばらくした頃、さらに母の容態が急変し、心拍数を示すモニターが30台におちた。ドクターに呼ばれ、挿管(気道に管を入れること)の説明をされた。不安でココロが潰れそうになった。人口呼吸器や点滴がないと生命を維持出来ない状態。挿管で口は塞がれ、鼻からは胃へと続くチューブ。脚の付け根から心臓近くの中心静脈までのラインが入り、おしっこの管も入っている。そして末梢血管からの点滴も。ドクターより「医療でできる限りのことは全てしている状態。あとはお母さんの生命力」と言われた。

母には持病があり、今までも何回か状態が悪くなり入院したことはあったけど、正直、今回は本当に死んじゃうかもしれないと思ってしまった。だけど、やっぱり母は運も生命力も強かった。明け方には、なんとか峠を越してくれた。

母が伝えてくれたこと

次の日には、意識がだいぶんハッキリしてきた。呼吸器がついているので声が出ないし、母はもともと目が殆ど見えない。でも「お母さん」と声をかけると頷いてくれた。手を握ると、私の手に何かを指で書こうとするので、手のひらになぞった文字を読んでみると「かみ、えんぴつ」と書いていた。看護師さんに紙とペンをかりて母の手に持たせた。するとこんなことを書いてくれた。

「今日は忙しいのにありがとう」と書いてある。

どこかが苦しいとか、痛いとか、そういうのではなく、最初に書いたのがこの言葉。私の身体中にしみた。優しい母らしいなぁという想いと、最近、母に、忙しい、忙しいといいすぎてたなぁという想いと。あと、緊張が少しほどけ、たまらず涙が溢れた。

それから「お父さんが心配、よろしくね」と。父と母は、昔からとても仲良し夫婦。突然の入院で、母の頭の中はとにかく父のことでいっぱいなのだろう。「大丈夫やで」と言うと、うんうんと頷いていた。

お母さんの子どもで良かった

そのあと母から「顔を拭いて」「髪をくくって」「リップクリームを塗って」と幾つかお願いがあった。みなりを気にするほど快復しているということ。嬉しかった。甘え上手で、かわいい母。母は、いつだってありのままだ。そんな母だから人にも優しいのかなぁと思ったりする。

私は昔から母に叱られた記憶が殆どない。食が細くてご飯が食べられない幼児期。ぼぉーっとしていた学童期。何度も学校の先生から呼び出しをくらった思春期。結婚して少し母とは距離が出来たけど、子育てが始まると、また母を頼るように。学生時代は勉強など殆どしなかったのに、いきなり看護学校に行くだの、助産師になるだの言って、結局、孫の世話などで母にたくさん負担をかけた30代。どんなときも母は「みさちゃん、お腹空いてない?」って、ただ、にっこりと笑ってくれていた。

そんなことを思い出しながら、母の長い髪を三つ編みし、私はお母さんの子どもで本当に良かったって思った。

突然届いた晩御飯

仕事が終わってから、病院へ行く。そして病院から帰ったら遅めの夕飯作り。これが最近の過ごし方。

昨日のこと。りんご助産院の母乳外来に来られてる方で医療処置が必要と判断したときに、いつも受け入れてもらってる医師、i先生から、電話がかかってきた。i先生は15年くらい前から母の主治医でもある。「お母さんの具合どう?」「お陰様でお母さんは元気になっていってます。」母の状態をを詳しく説明する。「今日、晩御飯はどうするの?」「晩御飯はね…仕事終わるの遅くなりそうだし、そのあと病院に行くし、作るヒマなさそうだから、お父さんも誘ってみんなで外食かなぁー。」とこたえると「みんなのぶん、作ったから今から持って行ってあげるね!」と。先生もクリニックの診療で忙しいのに、驚いた。なんと、私の名前にちなんで、ハヤシライス‼︎医療事務のMちゃんと一緒にわざわざ自宅へ届けてくれた。


美味しかったーーーー♡

ありがたいなぁ。ホントに人に恵まれていると思う。私は、これといって取り柄のない人間だけど、それだけが自慢と言ってもいいくらい。素敵な人に恵まれて本当に幸せ。

母の入院している病院は私がもともと勤めていた病院だけど、昔からのスタッフはもちろんのこと、皆様にとても良くしていただいている。

家族、友達、親戚。

母のことは言ってはいないけど、りんご助産院のお母さんがたとベイビーたちには、いつもと同じように元気をいただいている。

本当に感謝しています。こんなときでも、こんなときだからこそ、感謝を味わうことが出来ることを、とても有難く思う。

穏やかな時間

チューブだらけのカラダと、危険防止のため(無意識に呼吸器や点滴を外してしまわないように)固定された両手。面会に行ってる間は手の固定をはずせるので、今は時間の許す限り母のそばにいたいと思う。ドクターより、来週には呼吸器を外せるだろうということ。

今日も感謝とともに、穏やかな時間が流れている。